Foreword
初めからデザインには興味があった。
たまたま上司の机に置いてあるのを見かけ、タイトルに興味が湧いたのだ。「デザインと心理学」。昨今、テレビCMや街中の広告、webサイトなど消費者や利用者が意識してない潜在的な部分で強く働きかけているのがデザインだと感じる。ユーザーインターフェイスでの良いUI、悪いUIの定義はよく分からないが、見やすいUI、見ずらいUI、使いやすいUI、使いづらいUIは試してみれば分かる。なぜそのようなUIなのか?
なぜ使いやすいのか? そこまで考えたことはなかったので本書を読んで感心することが多かった。そういえば以前、ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代(ダニエル・ピンク著 大前研一訳)では以下のことが書かれているのを思い出した。
- 機能だけでなく「デザイン」
- 議論よりは「物語」
- 個別よりも「全体の調和」
- 論理ではなく「共感」
- まじめだけでなく「遊び心」
- モノよりも「生きがい」
今後はデザインありきの時代になってゆく。MBAよりデザインを学べ!と大前氏が言っていたことも覚えているなー。わくわくしたのも覚えている。そのくらい、人の心理に強く働きかけ、無意識下での影響力が大きいのではないかと思う。今回は本書の内容であるUIデザインの原則と効果的な適応方法を自分なりに要約、紹介し、感じたことをまとめていく。
Introduction
UIデザイン原則、知識と経験
インタラクティブなコンピューターシステムの登場後、デザインの質の向上を目指してUIデザインに関する原則がすぐに提唱されるようになった。21世紀に入ってからも個人や組織がUIデザイン原則を提唱したり、ソフトウェアのデザイン原則を公開したりしている。
- ジョンソン [Johnson 2007]
- マイクロソフト [Microsoft Corporation 2009]
- アップル [Apple Computer 2009]
- オラクル/サン・マイクロシステムズ [Oracle Corporation/Sun Microsystems 2001]
UIデザイン原則にはどの程度の価値があるのか。それは、そうした原則を誰がデザイン上の問題に適用するかによって変わってくる。UIデザイン原則を実践するのはたやすいことではなく、「取るべき行動ー何をなすべきか」よりも「達成すべき目的ー何を成し遂げるべきか」が掲げられていることが多い。また、適用範囲を広げるため、意図的に一般化した形で書かれており、それなりの「解釈」が要求されてくる。さらに、事態を複雑にしているのが、対象となる状況に適用できそうな原則が複数あるケースで、デザイナーは、どの原則を優先して適用すべきか判断を迫られることになる。
-デザイン上の目標が互いに相容れない例-
- 画面が明るく、かつバッテリー寿命が長い
- 軽量でありながら頑丈
- 多機能でありながら使用法が覚えやすい
- 高性能でありながらシンプル
- 高解像度でありながら高速の読み込み
このような複雑な状況において、UIデザイン原則はUIのデザインや評価の技術に長けた人が熟慮を重ねて慎重に判断し適用しなげればならない。原則の適用にもっとも適しているのはそうした原則の根本原理を理解しており、自らそれを適用した豊富な経験から多くの知識を得た人なのである。そうした中、認知心理学の素養のない人が増えている。こうした人々がUIデザイン原則を合理的に現場に適用すること、そのために必要な論拠や背景知識が本書では書かれている。
著名なUIデザイン原則
[Shneiderman 1987] および [Shneiderman & Plaisant 2009] |
[Nielsen & Molich 1990] |
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どちらも「一貫性の保持」を第一にあげており、類似するルールが提唱されている。
それには、それなりの理由があり、今後ブログで紹介して行く。
consideration
introductionの重要な部分をまとめてみると、すでに気づかされることが多くある。複数の原則を相互に適用する機会は毎回のように発生している。しかし、シンプルに、使いやすく、一貫性を保って、などは自己の感覚で適応することが多かったように思える。基準があっても揃えるところは揃える、左揃え、右揃えなど簡易的な基準でしかなく、最終的な判断は自己判断での使いやすさ、見やすさに頼る。その結果他人から見たら、使いづらい、見づらい等、いわゆるユーザー目線に欠ける物が出来上がってしまうのだと感じる。何を成し遂げるべきか。それは仕様によって、お客さんの要望によって違ってくる。UIデザインの原則とその心理について学べば、あらゆるユーザーが満足する、または満足度が高いUIがつくれるのだろうか? 少なくても、それは最小限頭に入れておくべき基本的なことのようにも思えるが、具体的に知ることはなかった。熟練したデザイナーは人間の認知の限界、記憶力、注意力、思考決定などさまざまな知識を把握した上で仕様、要望、を反映しデザインを考えていると思うと頭が下がる。
次回は第1章 認知バイアスについて綴る予定。